先日車の修理のためにディーラーに寄りました。30分ぐらいで直るのでちょっとそこで待っておれと言われ、結局1時間半ほど待たされたのですが、手持ち無沙汰でその辺を見回しているとマガジンラックにLEONなる雑誌を発見。いわゆる「チョイワル」オヤジのガイドブックみたいなやつです。興味本位で手に取ってみるとこれがオモシロイのなんのって。嫁と二人でうひゃうひゃ笑いながら楽しいひと時を過ごすことができました。

確かに「チョイワル」という単語は表現としても端的で耳残りもよく、はやり言葉になるのも理解できます。しかしこの雑誌、この手の略語・造語の2匹目、3匹目のドジョウで埋め尽くされた突っ込みどころ満載のドジョウ鍋状態で、内容よりも新しいオモシロ言葉を発明することに編集者が血道をあげているとしか思えませんでした。

「チョイワル」に始まり「チョイエグ」、「チョイロクデナシ」、「チョイプレ(プレゼントのことらしい)」と、なんでもかんでも「チョイ」が付いて略語化されていく。すべてのページになにかしらの形でこの手の単語が出現する勢いです。当然嫁との間でにわか新語製造合戦が勃発し、その場で以下のような新しい魅力的なオヤジ像が提案されたので、次号で使ってください。

「チョイクサ」—ちょっと臭い。
「チョイハナ」—ちょっと洟が出ている。あるいは鼻毛が出ている。
「チョイヒン」—ちょっと貧乏。
ちなみに応用編として「チョイゴミ捨てに行ってくる」などの用法も我が家で一時的に流行したことを併せてご報告させていただきます。

このほかにも、「イタオヤ」という単語があちこちに出てきて、最初は「痛いオヤジ」のことだと思ってなんの疑問もなく読み進んでいたんですが、途中でどうやらこの「イタ」は「イタリア」のことだ、とふと気づいたり。「艶女」、「艶男」、「艶夜」なんていう単語にそれぞれ「アデージョ」、「アディオス」、「アデーヤ」などと振り仮名が振られていたり(しかも頻出単語です)。。。胸焼けがするほど大量の言葉遊びがちりばめられているのですが、そのクオリティが全体的にオヤジギャグなのが哀しいところ。挙句の果てにはここぞと言う場面で「チョメチョメ」、「しっぽり」など加齢臭の漂う単語が現れてしまい読む人の涙を誘います。

というかですねぇ、まぁ、おしゃれとかファッションとかとおよそ縁のない生活をしている僕が言うのもナンですが、ぶっちゃけ、こういう雑誌で紹介されているようなかっこいいオジサンは、こういう雑誌は読んでないと思うわけですよ。逆に、こういう雑誌を読んでいても、いつまでたってもそのあなたの目指しているような状態にはなりませんよ、と。余計なお世話だとは思いますがどうしても言いたくなってしまうわけで。

いや、この雑誌で紹介されているモノには罪はないんです。スーツも靴も時計も確かにいいモノなんでしょう。そこで紹介されている人々は確かにかっこいいオジサンだ。でも、この雑誌で前面に出ているのは、どうも「豊かな生活を楽しむために、例えばいいモノを身の回りに置くなんていうのはどうでしょう?」的な提案ではなく、もっとストレートに「モテタイ」という欲求そのもの。「モテルタメニハドウスレバイイカ」、「モテルタメニハドウスレバイイカ」、「モテルタメニハドウスレバイイカ」。。。非常にイカ臭い欲求がここまで臆面もなく表明されている「大人」向け雑誌、というのが個人的にはなんとも違和感があるんです。

以前、ポパイやホットドッグプレスなどの雑誌が流行して、最近の学生はナンパの仕方まで雑誌で教えられている、マニュアル人間だ、なんていう批判がありましたけど、ひょっとして当時これらの雑誌を読んでいた世代が今はLEONに飛びついているんでしょうかね。だとすると本当にマニュアル人間が製造されてしまったんだなぁ。。。「イタオヤ気取りでアデージョにチョイプレ」なんていう文章が40前後のいいオジサンの脳に流し込まれている様を想像すると、本気で薄ら寒いです。。。